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閑話

【閑話】最初で最後の給与振込

投稿日:2020年11月20日 更新日:

以前もご紹介しました“irodori”の代表_小島拓也さんが、“1人の社員のエピソード”をお伝えくださいました。いろいろなことを感じました。そして、何とも言えない、何か悔しい気持ちになりました。小島さんのご了解を得て一部転載させて頂きます。(“irodori”のホームページ: https://mirise-irodori.com/top/

 小島さんの社員を思う気持ち、愛情がとても伝わってきます。
小島さんのような経営者が溢れる社会になればいいなと心より願っています。

 

最初で最後の給与振込

<2020年12月3日投稿(一部転載)>   
出典:https://www.facebook.com/profile.php?id=100022110046002

 ちょうど一週間前、悲しい、悔しい、出来事がありました。
会社に入社して2ヶ月も経たない社員が、自宅で亡くなっていたのです。
遺族からの最後の言葉に救われる気持ちもありましたので、気持ちを整理しながら投稿しようと思います。

 先月の11月は3連休がありました。その連休明け、普段なら出社してくるはずが何の連絡もなく、欠勤でした。電話を朝、昼、夕かけましたが、繋がりませんでした。翌日になっても、その社員は出勤してきませんでした。
 いつもなら、体調不良時は、必ず私にメール連絡をくれていました。本人は掃除が苦手で、家の中が散らかっていた時も、休日に珍しく掃除をして、綺麗にした時は、その綺麗になったトイレの写真などをわざわざ私にメールで送ってきてくれるくらい、報告は色々とマメにくれるタイプでした。

 1日目は電話が不通でしたが、体調不良で寝込んでいるのかと思っていました。でも、2日目になっても、出社してこないことが分かった瞬間、おかしいと思いました。その日も電話をしましたが、繋がらなかった時に、私の頭の中で最悪のケースが思い浮かびました。すぐに、本人に関わっていた訪問看護の人や、主治医のいる通院先などにも連絡して、本人と連額が取れるか。最近本人と会ったのはいつなのかなどを確認しました。

 その後、関係機関から妹さんと連絡を繋げて頂きましたが、兄とは距離を置くように言われているという事と、本人の部屋の合鍵は持っていない事が分かりました。2日後、妹さん、警察、管理会社、関係機関などで本人宅を訪問すると、本人は自宅で倒れており、既に死亡していたとのことでした。

 警察から、私のところに電話で事情聴取があった時、苦しい気持ちになりました。
もっと早く見つけられていた。
もっと早く気づいて動けていたのではないか。
そんな自分の声が何度も頭にこだまする感じでした。

 その社員は50代後半の男性で、「アルコール依存症」「うつ」の診断と、最近は発達障害(ADHD)の診断も受けていました。食事はもっぱら「ほっともっと」のお弁当でした。
 うちの会社に入社する前は、アルコール依存症の治療で何度も入退院を繰り返していたそうです。ここ数年は仕事や就職が出来ておらず、自宅で引きこもる状態も続いていました。そんな中、縁があってirodoriに、2カ月前の10月中旬から入社してくれました。

 顔は強面でしたが、芸大出身の彼は、写真撮影の技術がとても素晴らしく、働きだしてからは、周りのみなに写真撮影の技術を教えてくれたりしていました。会社での服装は、「私服で良いですよ」と言っても、「この服装が良いんですよね」と笑顔で話しながら、いつも、白シャツに黒のスラックスと黒の革靴でした。

 そんな彼が自宅で亡くなっていた事が分かり、警察からの事情聴取を終えた後、私はすぐに妹さんに電話し、一昨日に遺品を引き取りに来られました。
 妹さんは、本人の幼少期の頃から色々な話をして下さいました。また会社での様子はこちらから、お話させて頂きました。妹さんに、遺品の引き渡しをする時になると、他の社員も出てきて、妹さんに「彼とは写真撮影を一緒にしていたんです」「Photoshopでの加工も教えてもらいました」等々、色々と職場での様子などを一生懸命伝えてくれていました。その横で、泣いている社員もいました。

 そして、帰る間際、妹さんから、こんな話がありました。
「日曜日、親族だけで葬儀を終えました。そして、自宅で遺品整理している時に、兄の通帳がありました。3日おきくらいに、兄はお金を引き出していたんですが、最後の1行に振込がありました。54376円。これはおそらく給与ですよね。兄は最後、自分の力で働いた。何とかしようと動き出していた。これを見た時に、すごく嬉しかったです。」「最後は、兄の好きな写真に関わる仕事が出来て、良かったです。」という話でした。

 その話を聞いて、何故か泣けてきました。そばにいた社員も目を赤らめて泣いていました。数年間は、働けてなかったけど、最後の最後に、うちの会社を選んでくれて、一緒に働けて、様々な事を教えてくれました。本人が使っていたカメラの三脚や照明器具は、「使えるので、もし良ければ会社で使って下さい。兄も喜ぶと思います。」と仰って下さいました。
 そして、最後に、妹さんから、「会いたい人がいるなら、会えるうちに、会いにいって下さいね。」との言葉をかけて頂きました。

本当にありがとうございます。大切に使わせて頂きます。
仕事への姿勢。
撮影するまでの準備の大切さ。
命の尊さ。
家族の大切さ。
人と人との繋がり。
様々なことを学ばせてもらいました。
本人が大切にしていたこと。
私は大切な人の大切なモノやコトを大切にしていきたい。
そして、自分自身も大切にしていきたいと、改めて思いました。
全てに感謝。

-閑話

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