こんにちわ。フェイスブックでご縁を頂いた”irodori”という施設が京都市にあります。動画編集やグラフィックデザインなどの事業を行っています。(”irodori”のホームページ: https://mirise-irodori.com/top/ )
そこの代表をされている小島拓也さんが、”1人の社員から退職届を提出された際のエピソード”を綴ってくださいました。
それを読んだ私は、とても感動し「是非ブログで紹介したい」とお願いして了承頂きました。少し長いですが、下記にご紹介させて頂きます。
小島さんや社員の方々の気持ちがとても伝わる内容です。ぜひ、ご一読頂ければと思います。
朝礼で破り捨てた退職届
<2020年10月22日掲載
(出典:https://www.facebook.com/profile.php?id=100022110046002)>
先週末、退職意向を申し出てきた社員がいました。その社員は知的障害がありました。今まで仕事が続かず、色々な会社を転々としていました。会社の人に何度も騙されました。カードを取られて、お金を使われたりもしました。「人」を信用できなくなっていました。
そんな中、縁があり、3年前にirodoriに入社してくれました。とても素直で、とても不器用で、とても笑顔が似合う人でした。その人が、だんだん、会社を休みがちになっていきました。
そして、先日、「自分は頭が悪いので、周りの皆のようにすぐ覚えれない。すぐ忘れる。迷惑かけるし。」「自分が悪いのですが、迷惑かけるので、退職をします。」 と私に話してきたのです。
私からは、「迷惑はかかっていない。会社の役に立っている」「人と比べなくていい」。そんなありふれた言葉で引き留めましたが、その意思は固く、退職意向は変わりませんでした。
今から約3年前、私は彼に厳しい面接をしました。それでも、不器用ながらも、言葉を選びながら、ゆっくり受け答えしてくれました。知的障害があっても、不器用なところがあっても、パソコンが出来なくても、「働きたい!」という真っすぐな気持ちに触れ、私はその人を思い切って採用しました。
それから、3年が経ちました。この3年間でも、もちろん、色々と問題やトラブルはあるけれど、何とか乗り越えてきました。ちょっとやそっとのことで、簡単に退職という決断は出来ないと思いました。でも、説得をしたけど、その人の気持ちは変わりませんでした。
私はそのことを、会社の皆に話しました。すると、その中で、「メッセージ動画を作って送ろう」という事になりました。その動画を観ても、退職を決めた人の心は変わらないかもしれない。それでも、自分達で出来ることはやろう。だめもとでもやろう。ということになりました。
いよいよ、退職届を受け取る日になりました。「ご迷惑をおかけしました。」と言いながら、退職届を私のもとに持ってきました。退職手続きを終え、今後の退職後の流れのこと、失業給付のことなどを説明し終えました。
そして、最後に、私の方から、観てもらいたい動画があると彼に言いました。その動画は、会社のみんな一人ひとりが、会社を辞めると言ったその彼に向けて撮影してくれたビデオメッセージでした。約10分間の動画を観てもらいました。「・・・・・・」。
彼の目の中に、光るものがありました。なぜか、私も泣けてきました。動画を観終えると、「嬉しいです。」と一言。
その後、会社に遅くまで残ってくれていた社員などとも、彼は色々と話をしました。家に帰ってるはずの社員から、彼のもとに電話もありました。皆の思いを伝えました。すると、彼が、「あの、自宅でもう一度考え直して良いでしょうか。」とのこと。
そして、翌日、電話があり、「あの後、皆からもらった動画を5回観てしまいました。すごくうれしくて。自分はここに居ても良いんだと思えた。もう一度、働かせて欲しい。」との返事でした。私は嬉しくなり、「もちろん、大丈夫。また一緒に働こう」とだけ伝えました。
今日の朝礼で、その彼が出勤してきました。皆に感謝の思いを伝えると共に、自分が何に失敗してきたのか、何に躓いてきたのか。何が課題なのか。不器用ながらも、言葉を選びながら一生懸命に話すその姿に、また少し私の目もゆるみました。
そして、「これはもういらんな」と言い、私は預かっていた彼の退職届を、その朝礼の場で、皆の前で、破り捨てました。すると、皆、なぜか、笑い出し、会社の中が爆笑の渦に囲まれました。
伝えているつもりでも、伝わっていないことがある。
伝えてないつもりでも、伝わっていることがある。
「人」は自分が会社から必要とされてないと感じた時、何を考えるのか。
「人」は自分が社会から必要とされてないと感じた時、何を考えるのか。
そんなことを、彼から学ばせてもらいました。
「人」を信用できなくなっていた彼だけど、「人」を信用しようと思えるきっかけになったのも、「人」だった。やはり、「人」の力はすごいなと感じる。
そして、「仲間」の力、「みんな」の力はすごいなと感じた。
みんな、ありがとう。。。
また、今日から、一緒に働こう。