こんにちは。 坂本光司先生(人を大切にする経営学会会長)は、著書 ”経営者のノート”のなかで「1)企業の”あり方”について、2)経営者の”あり方”について、3)企業の”やり方”について、4)”企業と社員”について、5)”正しくある”ことについて」それぞれ指針を示されています。
本日から、「”企業と社員”について」の一部をご紹介させて頂き、個人的に感じていることについてもお伝えできればと思います。
1.”企業と社員”について ①
− 企業の最大の商品は社員である −
2.”企業と社員”について ②
− 仲間意識の醸成は喜びも苦しみも分かち合うことから始まる −
1.”企業と社員”について ①
− 企業の最大の商品は社員である −
⚪️企業の最大の商品は、
社員という名の商品である。
坂本先生は、こう述べられています。「企業の最大の商品は、その企業が製造販売する”商品”や”サービス”ではない。”生産力”でも”販売力”でも”ビジネスモデル”でもない。企業の最大の商品は、”社員”という名の商品である。価値ある商品やサービスを”創造・提案”してくれるのは、いつの時代も一生懸命頑張ってくれている”社員”だからである。物的成熟社会、国際的企業間競争の激化社会、Iot社会、AI社会、さらには超高齢化社会が年々確実に進行するこれからの時代には、このことはより重要になる。こうした社会では、商品や経営戦略による差別化は難しくなり、『誰がつくってくれた商品か』『誰が提供してくれるサービスか』『誰が今後とも関わってくれるのか』などのことが、より重要になるからだ。人、つまり”社員”が最大の商品となるのである。」
東京都墨田区に、人情味溢れる風土で思いを形にする”浜野製作所”という会社があります。そこでのエピソードです。
事故で歩けなくなった娘さんの誕生日プレゼントに「リハビリに必要な”鉄パイプ”をつくってほしい」という父親からの突然の依頼がありました。娘と一緒にリハビリをしたいと思ったのですが、他で引き受けてくれる会社がなかったのです。手間暇かかる仕事でしたが、社員が仕事の意義を感じ”娘さんと父親が手をつないで散歩している姿”を思い浮かべながら、時には朝まで徹夜して誕生日に完成させ届けました。後日、父親から長い手紙が”浜野製作所”に来ました。坂本先生が言わんとされていることが伝わる内容と思い、以下にその手紙を掲載させて頂きます。父親の想いを感じて頂けたら幸いです。
「”浜野製作所のみなさまへ”
ありがとうございました。実を言うと、浜野さんのところでつくってもらったものがあるものの、渡そうか渡すまいか直前まで悩みました。
1人娘であるということ、障がいがあるということ、歩けないということ、その責任は自身にもあるということ、そういう理由もあり、娘を甘やかせて育ててしまい、おもちゃとか買いたいというものは限りなく買い与えていました。
しかし、今回の誕生日のプレゼントは渡すのを迷いました。
『いらない!パパ約束が違う、こんなの誕生日プレゼントじゃない。ままごとセットがほしいって言ったじゃない!リハビリなんかやらないし、そんなのいらない!』そうひっくり返されてしまうのではないかと心配で不安で、直前まで悩んでいました。
けれども、浜野製作所のみなさんがほんとうに一生懸命つくっていただいたものだから、勇気を振り絞って自分の思いを正直に一生懸命伝えました。
『これが今年のプレゼントだ。パパと一緒にがんばろう』と言うと、6歳になる娘が、大きな瞳に涙をためながら『パパありがとう!パパありがとう』と言って、抱きついてきてくれたのです。浜野製作所のみなさま、ほんとうにありがとうございました。」
2.”企業と社員”について ②
− 仲間意識の醸成は喜びも苦しみも分かち合うことから始まる −
⚪️帰属意識や仲間意識の醸成は、
喜びも悲しみも苦しみも、
ともに分かち合うところから始まる。
坂本先生は、こう述べられています。「社員の企業への”愛社心”や強い”帰属意識”は、経営者をはじめとする”組織の仲間たちとの強い信頼関係”がベースになって培われる。人間関係が気まずく組織内がギスギスしていたり、風通しが悪く同僚や上司への疑心暗鬼の気持ちがある限り、”愛社心”や強い”仲間意識”など生まれるはずがない。社員の”愛社心”を高めるとともに”よい社風”の”よい企業”を作りたいと思うのなら、”喜びも苦しみもそして悲しみもともに分かちあう、まるで家族のような温かい経営”が必要不可欠なのである。心優しい社員は、同一組織内に”勝ち組”と”負け組”を発生させる、個人戦や成果主義など決して求めてはいないのである。」
静岡県浜松市に”松川電気”という会社があります。社長が「うちは松川一家だから」というほど、”大家族主義”が根付いた会社です。社長は、”感謝”や”思いやり”、”絆”ということを大切にしており、「1人で大きくなったわけではない」ことに気づいてもらうため、社長が幹部に、幹部が一般社員に”心の教育”を行っています。
’”松川電気”には、社員とその家族を大切にする風土があります。誕生日やクリスマスには社員と配偶者に”花とケーキ”を贈り、社員・配偶者や協力会社の人々は会社でインフルエンザ予防接種を受けられるようにしています。社員が休業中の給与は全額保証し、定年の年齢になっても社員が「辞めたい」というまで定年時と同額の給与で働き続けることができます。また、”社員同士で助け合う風土”もできているので、近年の離職率は”0%”となっているのです。ほんとうに”仲間意識”が醸成されている会社だと思います。
注)詳細は、下記の本に掲載されていますので、ご確認願います。